嵯峨美子さんは端正な美人である。それに元新劇の役者だけあって語りがうまい。語り始めるといつの間にか歌いだしている。そんな彼女のシャンソンの世界に惹きこまれていった。博品館はそう広くない。定員は4百人弱か。シャンソンにはそれくらいの会場がいい。ぎっしり満員の盛況であった。むかしは銀座の銀巴里や渋谷のジャンジャンなどのステージで鍛えた彼女も、今はもうシャンソン界のベテランに入る。このくらいの会場で2時間たっぷり一人舞台で聴かせる歌手である。曲目は、
第一部は
いつか森へ行こう/わが麗しの恋物語/聞かせてよ愛の言葉を/ミラボー橋/昔の歌/涙/リヨン駅/あきれたあんた/リリー・マルレーン/百万本のバラ
第二部は
サンフランシスコの六枚の枯葉/愛の贈り物/運河/愛の幕切れ/ボン・ボワイヤージュ/スカーフ/再会/貴婦人/愛は限りなく
嵯峨美子さんと言えば、深作欣二監督の映画『火宅の人』(1986年)の中で主題歌「火宅の人」を歌っているのが彼女である。作家檀一雄の代表作とも言える作品の映画化である。家庭を捨て、新劇女優と同棲するなど、自由奔放な作家の生きざまを描く、この映画を僕は2度見ている。キャストは 緒形拳 いしだあゆみ 原田美枝子など個性派ぞろいであった。
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