飼っている猫の餌が残り少なくなったので、午後自転車でサイクリングを兼ねて隣町のホームセンターまで買いに出た。猫の世話は娘に任せているが、餌の補給だけは僕がする。いつの間にかそうなった。猫のビーは赤ん坊の時に我が家の前に捨てられていた。一緒に暮らすようになって20年近く経つ。こうなると家族も同様だ。人間の年でいえばもう90歳はとうに超えているだろう。ひょっとすると100歳を超えているかもしれない。我が家で一番の年長者だ。今年の夏は特に心配した。一時期食欲がなく、餌をまったく食べなくなった。しばらくは水すら飲まなかった。僕は選挙のことで夢中であった。民主党が勝たなければ、日本はもうどうかなってしまうだろうと本気で考えていた。麻生首相の顔がテレビに出て、責任力、責任力とバカの一つ覚えみたいに繰り返しいるのを聞くだけで腹が立って仕方がなかった。そんなとき猫の顔を見るだけで心が癒されるのにビーは元気がなかった。油蝉が盛んに鳴いている時期であった。
その油蝉の鳴き声がいつの間にか消えて、法師蝉の声を聞く頃になってビーは水を飲むようになった。その後餌も食べるようになった。
そして今日、餌を買って帰り道、森の中の道を自転車で抜けるとき、ヒグラシの鳴き声を聞いた。もう夕暮れだった。ヒグラシは盛んに鳴いている。カナカナ、カナカナ、…。心にしみる声だ。いつだったか高野山の奥の院で聞いたヒグラシの声を思い出していた。あの時の旅からもう何年経つだろう。もうずいぶん昔のことだ。
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