雅(みやび)の世界の一夜であった。帰宅して床についても「六条院の女楽」の「夜の更けゆくままに、言ふ限りなくなつかしき夜の御遊び」の音色が耳に残っていて、豊かな気持ちであった。
『源氏物語』や『枕草子』などを読んでいると、「遊び」「御遊び」などの言葉が出てくる。これは多くは管絃の合奏のことである。用いる楽器はいわゆる雅楽(宮中の儀式・遊宴、寺院の儀式などに用いられるかなり大きな編成の音楽・舞楽で専門の人・舞人がおこなう)の管楽器・絃楽器と同じであるが、「遊び」は宮中や貴族の邸で、貴族たち自身が楽器を演奏して楽しむ小音楽会のようなものである。僕がその日、聴いたものは、平安時代そのままの管絃の遊びの演奏の再現であった。
今回の管絃合奏は、『源氏物語』の若菜下の巻の「六条院の女楽(おんながく)」の記述に従って、琴(きん)、筝(そう)、和琴(わごん)、琵琶(びわ)と絃楽器をそろえ、これも物語にある管楽器の笙(しょう)、横笛(よこぶえ)を加えた本格的なものであった。また舞楽も一つ披露された。これは私的な遊宴や祝賀などで行う童舞(わらわまい)もあり、源氏物語の中の記述のような舞姿の愛らしさを現実に見るようであった。
総合解説は元白百合女子大の石田百合子先生で、具体的で分かりやすい説明であった。また演奏は中央大教授の池澤滋子氏の七絃琴、雅楽演奏家の石川高氏が笙、和琴、三ノ鼓を、同じく中村かほる氏が琵琶を、同じく中村仁美氏が筝とひちりきを、同じく八木千暁氏が横笛と唱歌(しょうが)を、また童舞を中村華子氏が舞った。
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